コミュニケーション・ラボラトリーの公式ブログです。イベントの告知のほか、いままで書き溜め、Mixiなどで公開していた文章なども公開していきます。
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「会話はキャッチボールだ」という言葉は、誰しも一度くらいは聞いたことがある比喩表現ではないでしょうか。2人の人間が相手の話も聞かないで勝手に言葉を発しあうのではなく、相手の発言を受け止め、そして返すということで会話が成立するというようなことを表現したのだと思います。
しかし、コミュニケーションに関心を持って研究しようとしている人間としてこの表現が良いたとえだとは思えていませんでした。なぜかというと、キャッチボールでは確かに相手の取りやすいところを狙ってボールを投げるべきものであるけど、仮に悪送球をしてしまい相手が態勢を崩して捕球したとしても、次に相手がボールを投げ返すときには態勢を立て直して投げてくれるものだからです。実際の会話ってそういうものではないでしょう。自分が相手にとって的外れな発言をしてしまったり、受け止められないような発言をしてしまったりわけのわからない発言をした場合、相手から返ってくる言葉も、「売り言葉に買い言葉」のようになって僕の取りやすいボールとならないと思うからです。であるから、キャッチボールという比喩では明らかに会話を表現しきれていないのです。
では、会話を例えるならなんなのだろうと考えていたのが1年以上の前に主催したファシリテーション講座の時だったのですが、その時思いついたのが「テニスのラリー」という比喩でした。ここでの「ラリー」とは、試合で勝つためにボールを打ち合っている状況ではなく、練習などでひたすら2人組で長くボールを打ち合っている様子を指します。捕球と送球という二つの動作が独立して行われる野球のキャッチボールと違い、テニスは来たボールに対して返球があるだけ。そして、テニスや卓球を多少でも経験があればわかるように、ラリーを続けようとするなら、相手にとって取りにくい場所へボールがいってしまうと、相手が良い態勢で打ち返すことができず自分のところにちゃんと返ってこない可能性が高くなります。結果的にラリーは続かなくなってしまう。この「テニスのラリー」という比喩表現であれば、キャッチボールで表現できない、会話における「言葉の相互影響性」:をちゃんと説明できていると気づき、思いついたときにはとてもテンションが上がってしまいました。
そのあとしばらくこの表現のことを忘れてしまっていたのですが、先日参加した西村佳哲さんの「”自分の仕事を考える三日間”の作り方」で、西村さんがファシリテーターとしてシンポジウムの場を仕切るときの会場やゲストとのやりとりや発話をテニスの比喩をつかって説明されていた時に、自分の「会話とはテニスのラリーである」という比喩を久しぶりに思い出した次第でした。
西村さんのいうテニスの比喩は、僕のものとは少し着眼点が違い、誰かと話すときに、その相手と向き合っている「自分」がいて、そしてそのさらに後ろに発話のやりとりを客観的にみている「自分自身」がいるという話の流れでのたとえ話でした。「自分」が「相手」に近づいてやりとりをするのがテニスのネット際での攻防であり、コートの後ろライン際(ベースライン)で打ち合っているときは内的世界の「自分自身」に近づいて「相手」と話をしているとき。そして、あんまりネット際ばかりにいると、相手のボールを打ち返せなくなってしまう。なので、ずっとネット際からばかりにいないで、自分自身とも語りながら発話をしていった方が「すべらない」場の仕切りができる、というような説明をしてくださっていたかと思います(僕の解釈では)。
この説明を聞いて、もともとあった自分の「会話とはテニスのラリーである」という比喩が、テニスコートの前後関係やネット際などの概念が加わることでより深い省察になりえたと感じました。テニスのように相手と会話をする中で、ネット際からベースラインまで自分のコートを移動するように「会話する相手に心理的に近づき盛り上がって話す自分」と「会話を客観視する内面の自分自身と語り合いながら相手との会話を続ける自分」との両方を持って相手と話をしていくことで、より深く、より長く、より強く相手と語っていくことができるのではないか、と。
更に、「続けるためのラリー」というのとは違ってしまいますが、ベースラインで冷静に打ち合うだけではなく、相手のコートにボールをスマッシュするには、ネット際に出ていくことも恐れてはいけないのだと思います。それは、自分の内面に「自分自身」がいるように、話をしている相手にとっても「内的なその人自身」がいて、「その人自身」に思いを届けるということに近いような気もします。
何はともあれ、「会話はキャッチボールである」という考え方は、会話を本質的に理解するためには不十分であり、「会話はテニスである」というイメージを持つことで、自分の言葉の発し方や相手とのやり取りの仕方、相手の発話への受け答え方など考え直すきっかけになるような気がします。
そして、テニスというたとえを改めて考えてみると、相手がどんなに下手でちゃんとボールを返すことができないとしても、自分がボールの受け止め方がうまくなればちゃんと相手に次の良いボールを返すことができるということが重要な点です。お互いが良いボールを返そうとしあうことはもちろん重要ですが、相手がそうでなくても、僕が受け止めてちゃんと相手の打ちやすい場所へ返す力を持っていれば会話というテニスのラリーはいつまでも続けることができるのです。どこへ行くかわからないボールをちゃんと相手に返すのは高い技術が必要ですが、どんなボールが来ても反応できるように、ネット際のように相手に近づきすぎず、コートの中央後ろ寄りに構えるというような位置取りをしてしっかり相手を見る。そしてそれだけではなく、言葉遣い、表現、間、発話のスピード、姿勢、単語などに気を配りながら質の高い返球をする技術を高める。そういう努力をしていくことで、失敗を繰り返しながら、よりよいコミュニケーションが取れるようになっていくのではないでしょうか。
長くなりましたが、拙文お読みいただきありがとうございました。
12月18日(日)にYDPという団体とちょっとイベントやります。よかったらぜひ~
http://www.ydpjapan.net/?p=576
しかし、コミュニケーションに関心を持って研究しようとしている人間としてこの表現が良いたとえだとは思えていませんでした。なぜかというと、キャッチボールでは確かに相手の取りやすいところを狙ってボールを投げるべきものであるけど、仮に悪送球をしてしまい相手が態勢を崩して捕球したとしても、次に相手がボールを投げ返すときには態勢を立て直して投げてくれるものだからです。実際の会話ってそういうものではないでしょう。自分が相手にとって的外れな発言をしてしまったり、受け止められないような発言をしてしまったりわけのわからない発言をした場合、相手から返ってくる言葉も、「売り言葉に買い言葉」のようになって僕の取りやすいボールとならないと思うからです。であるから、キャッチボールという比喩では明らかに会話を表現しきれていないのです。
では、会話を例えるならなんなのだろうと考えていたのが1年以上の前に主催したファシリテーション講座の時だったのですが、その時思いついたのが「テニスのラリー」という比喩でした。ここでの「ラリー」とは、試合で勝つためにボールを打ち合っている状況ではなく、練習などでひたすら2人組で長くボールを打ち合っている様子を指します。捕球と送球という二つの動作が独立して行われる野球のキャッチボールと違い、テニスは来たボールに対して返球があるだけ。そして、テニスや卓球を多少でも経験があればわかるように、ラリーを続けようとするなら、相手にとって取りにくい場所へボールがいってしまうと、相手が良い態勢で打ち返すことができず自分のところにちゃんと返ってこない可能性が高くなります。結果的にラリーは続かなくなってしまう。この「テニスのラリー」という比喩表現であれば、キャッチボールで表現できない、会話における「言葉の相互影響性」:をちゃんと説明できていると気づき、思いついたときにはとてもテンションが上がってしまいました。
そのあとしばらくこの表現のことを忘れてしまっていたのですが、先日参加した西村佳哲さんの「”自分の仕事を考える三日間”の作り方」で、西村さんがファシリテーターとしてシンポジウムの場を仕切るときの会場やゲストとのやりとりや発話をテニスの比喩をつかって説明されていた時に、自分の「会話とはテニスのラリーである」という比喩を久しぶりに思い出した次第でした。
西村さんのいうテニスの比喩は、僕のものとは少し着眼点が違い、誰かと話すときに、その相手と向き合っている「自分」がいて、そしてそのさらに後ろに発話のやりとりを客観的にみている「自分自身」がいるという話の流れでのたとえ話でした。「自分」が「相手」に近づいてやりとりをするのがテニスのネット際での攻防であり、コートの後ろライン際(ベースライン)で打ち合っているときは内的世界の「自分自身」に近づいて「相手」と話をしているとき。そして、あんまりネット際ばかりにいると、相手のボールを打ち返せなくなってしまう。なので、ずっとネット際からばかりにいないで、自分自身とも語りながら発話をしていった方が「すべらない」場の仕切りができる、というような説明をしてくださっていたかと思います(僕の解釈では)。
この説明を聞いて、もともとあった自分の「会話とはテニスのラリーである」という比喩が、テニスコートの前後関係やネット際などの概念が加わることでより深い省察になりえたと感じました。テニスのように相手と会話をする中で、ネット際からベースラインまで自分のコートを移動するように「会話する相手に心理的に近づき盛り上がって話す自分」と「会話を客観視する内面の自分自身と語り合いながら相手との会話を続ける自分」との両方を持って相手と話をしていくことで、より深く、より長く、より強く相手と語っていくことができるのではないか、と。
更に、「続けるためのラリー」というのとは違ってしまいますが、ベースラインで冷静に打ち合うだけではなく、相手のコートにボールをスマッシュするには、ネット際に出ていくことも恐れてはいけないのだと思います。それは、自分の内面に「自分自身」がいるように、話をしている相手にとっても「内的なその人自身」がいて、「その人自身」に思いを届けるということに近いような気もします。
何はともあれ、「会話はキャッチボールである」という考え方は、会話を本質的に理解するためには不十分であり、「会話はテニスである」というイメージを持つことで、自分の言葉の発し方や相手とのやり取りの仕方、相手の発話への受け答え方など考え直すきっかけになるような気がします。
そして、テニスというたとえを改めて考えてみると、相手がどんなに下手でちゃんとボールを返すことができないとしても、自分がボールの受け止め方がうまくなればちゃんと相手に次の良いボールを返すことができるということが重要な点です。お互いが良いボールを返そうとしあうことはもちろん重要ですが、相手がそうでなくても、僕が受け止めてちゃんと相手の打ちやすい場所へ返す力を持っていれば会話というテニスのラリーはいつまでも続けることができるのです。どこへ行くかわからないボールをちゃんと相手に返すのは高い技術が必要ですが、どんなボールが来ても反応できるように、ネット際のように相手に近づきすぎず、コートの中央後ろ寄りに構えるというような位置取りをしてしっかり相手を見る。そしてそれだけではなく、言葉遣い、表現、間、発話のスピード、姿勢、単語などに気を配りながら質の高い返球をする技術を高める。そういう努力をしていくことで、失敗を繰り返しながら、よりよいコミュニケーションが取れるようになっていくのではないでしょうか。
長くなりましたが、拙文お読みいただきありがとうございました。
12月18日(日)にYDPという団体とちょっとイベントやります。よかったらぜひ~
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プロフィール
HN:
Junya Tanaka
性別:
男性
職業:
NGOスタッフ/参加型の場づくり研究・実践家
自己紹介:
青山学院大学の社会人大学院社会情報学研究科ヒューマンイノベーションコースで参加型の場づくり、ワークショップデザイン、ファシリテーションなどについて研究をしながら、震災関連の仕事をしています。
2007年5月南カルフォルニア・オレンジ郡にある4年制教養大学を卒業しました。その後にすぐにイギリスの大学院に行くつもりが、もろもろの事情でいかないことにし、日本に帰国しました。なぜかいまだに日本にいます。人生思ったようにはならないです(笑)
後悔はしていませんが、試行錯誤です。
2011年5月にまたまた転職しました。震災関連の仕事をするためにアメリカ系のNGOで働き始めました。
また休日や平日の夜にはイベントや会議や参加型のプロセスのデザインやコーディネートをやったり、さまざまな研修や会議のお手伝いをしてます。ご関心があればお声掛けください。こういう研修ってふつう結構高いので、学生が参加できる金額でやれたらなと思っています(参加費応相談)
◇参加型ファシリテーション入門編ワークショップ
◇傾聴力ワークショップ
◇アイスブレーキング体験学習ワークショップ
◇開発と気候変動を考える参加型ワークショップ
<現在企画中>
▽発問力ワークショップ
▽ワークショップデザインコース
2007年5月南カルフォルニア・オレンジ郡にある4年制教養大学を卒業しました。その後にすぐにイギリスの大学院に行くつもりが、もろもろの事情でいかないことにし、日本に帰国しました。なぜかいまだに日本にいます。人生思ったようにはならないです(笑)
後悔はしていませんが、試行錯誤です。
2011年5月にまたまた転職しました。震災関連の仕事をするためにアメリカ系のNGOで働き始めました。
また休日や平日の夜にはイベントや会議や参加型のプロセスのデザインやコーディネートをやったり、さまざまな研修や会議のお手伝いをしてます。ご関心があればお声掛けください。こういう研修ってふつう結構高いので、学生が参加できる金額でやれたらなと思っています(参加費応相談)
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