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コミュニケーション・ラボラトリーの公式ブログです。イベントの告知のほか、いままで書き溜め、Mixiなどで公開していた文章なども公開していきます。
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自分自身がワークショップや対話の場づくりに関わるようになってかなりの年月が経ち、自分の周りでも主催者の立場でそういう取り組みをしている人が増えてきています。それでもまだ社会全体でいえば「ワークショップ」や「対話」という言葉の社会的に認知されているとは言えないし、まだまだ誤解も多いという印象があります。

最近自分の中でしっかりと定義したいと思っているのが「ワークショップ」と呼ばれる場と「対話の場」の違いについて。色々なイベントに参加したり告知されているプログラムを見ていると混同されているなぁ(意図的かもしれないですが)と感じることが多いので、自分なりにちょっとまとめてみたいと思っています。これらの違いの定義は僕個人の考えであり、所属機関(大学院や会社)でそのように定義づけしているわけではありません(仕事や授業の内容が影響を受けている部分はあるかと思いますが)。また、この定義から外れる使い方をしている活動を否定するわけでは決してないことをここに明記しておきます。

僕としては「ワークショップ」と「対話の場」を分けるのは「ふりかえりの対象となる体験の有無」だと考えています。「ワークショップ」では、プログラムの中に参加者全員が取り組む特定の活動があり、その活動に各々がどのように取り組んだのか、取り組みながらどのように感じたり、考えたりしていたのか、活動の後に「ふりかえる」時間を持ちます。ふりかえりの中では、体験のなかに散りばめられた気づきやまなびの要素を参加者自身が拾い集めたり、ワークショップではない日常の活動と比較をする、その全てを整理したりする中で、ワークショップという非日常的な場から、日常へ持ち帰る物を自分でパッケージングする作業を行っていると考えています。

これに対して「対話の場」では参加者全員がその場で共有できる体験的活動はなく、テーマに沿って個々の参加者が自分の体験をその場に持ち寄ることで場が成立していると考えています。「あなたは普段どんな環境に良い活動をしていますか?」「災害に備えてどんな準備をしていますか?」「職場でのコミュニケーションについて」というようなテーマに合わせた問いや議題が設定され、参加者が自身の「日常的体験」について語り合い、他者と比較し、ふりかえるという過程で気づきやまなびを得ていくというものだと思っています。

この定義で言えば僕の中でワールドカフェやOSTなどはワークショップではなく対話の場づくりの手法だと思っています。ただしワールドカフェなどの対話の活動そのものを参加者が共有する体験的活動と捉え、そのワールドカフェや対話の後に個々の参加者がどのように取り組んだかをふりかえるっている活動をワークショップと呼ぶことはできると思っているし、面白い活動であると思っています。

その場で体験したことをふりかえるワークショップと、参加者が体験を持ち寄るふりかえる対話の場では何が一番大きな違いかと言えば、ふりかえりの質が変わってきます。更に正確にいうならば、ふりかえりのプロセスの中で他の参加者の関わり方が変わります。参加者が自分の体験を持ち寄り語る対話の場においては、自分の過去や日常について参加者が「主観的」に語るため、他の参加者はその人の主観と言うフィルターを通してその人の体験を捉えることしかできません。そのため他の参加者が語りに対して行えるフィードバックは、限定的なものにならざるを得ないでしょう。(但しこの点は、同じ体験に居合わせた複数人が同じ対話の場にいれば補える点でもあるでしょう。)

それに対してワークショップでは、その場でみんなで体験を共有しているため、ある参加者が「あの時わたしは活動にこう取り組んでいて、このように感じていた」という主観的なふりかえりに対して「私にはそのときあなたの取り組み方がこう見えていて、それに対して私はこう感じた」というような主観的フィルターのかからない客観的なフィードバックを行うことができます。体験のすべてを捉えることはワークショップでも難しいですが、その場にいる複数の視点からその体験を捉えてふりかえることができるため、主観的な語りを行った参加者が、自分の視点では気がついていないさまざまなことも捉えながらふりかえりを行うことができます。このようなふりかえりによる他参加者の関わり方の違いはそれぞれの場における気づきや学びも大きく変えていくものだと思います。

ここまでいうと体験を多視点から見れるワークショップの方が対話の場よりも優れていると思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。ワークショップではプログラムの中で活動に取り組むため、ふりかえりの材料となるのはプログラムに紐付けされた限定された体験が中心となるということです。つまり、多様な参加者が参加していても、大抵似たようなことが起きるということでもあり、変化が起こるとしてもいくつか想定できることのうちのどれかが起きるという感じになります。これに対し対話の場では来た人の数だけ持ち寄る体験があることになります。つまりワークショップと対話の場の違いは、前者が「共有する一体験(もしくは一つの活動の中のいくつかの体験)を複数の視点からふりかえる活動」であり後者が「参加者一人一人が主観的に捉える多様な体験を持ち寄り他者とともにふりかえる活動」であると考えられます。

この二つは、優劣があるというよりはそれぞれにメリットとデメリットがあり、場の目的に合わせて戦略的に選択されるべきものだと考えています。また、ワークショップはプログラムの中に体験となる活動が含まれる必要があり、気づきやまなびに繋がるような活動をデザインするには慣れや経験、もしくは特定の分野における専門性が必要となってくるでしょう。このような違いがある二つの場ですが、構成する要素や必要となるスキル、マインドは共通するものが多いため同じような人達が似ている形で提供しているため混同されやすいのも事実でしょう。また前述したように対話を体験と位置づけるワークショップや、体験のふりかえりとともに個々の参加者の体験を持ち寄って語るような場もあるため、その境界線は更に曖昧になっていると考えられます。そうした課題があるなかでも、研究者でありつつ実践を行うものとして、それぞれの位置づけやメリットでメリットを認識しつつ、プログラム提供を行っていけたらいいなと考えています。

2012年11月2日初稿




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プロフィール
HN:
Junya Tanaka
性別:
男性
職業:
NGOスタッフ/参加型の場づくり研究・実践家
自己紹介:
青山学院大学の社会人大学院社会情報学研究科ヒューマンイノベーションコースで参加型の場づくり、ワークショップデザイン、ファシリテーションなどについて研究をしながら、震災関連の仕事をしています。

2007年5月南カルフォルニア・オレンジ郡にある4年制教養大学を卒業しました。その後にすぐにイギリスの大学院に行くつもりが、もろもろの事情でいかないことにし、日本に帰国しました。なぜかいまだに日本にいます。人生思ったようにはならないです(笑)
後悔はしていませんが、試行錯誤です。

2011年5月にまたまた転職しました。震災関連の仕事をするためにアメリカ系のNGOで働き始めました。

また休日や平日の夜にはイベントや会議や参加型のプロセスのデザインやコーディネートをやったり、さまざまな研修や会議のお手伝いをしてます。ご関心があればお声掛けください。こういう研修ってふつう結構高いので、学生が参加できる金額でやれたらなと思っています(参加費応相談)
◇参加型ファシリテーション入門編ワークショップ
◇傾聴力ワークショップ
◇アイスブレーキング体験学習ワークショップ
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<現在企画中>
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