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「知っているのは、名前だけ。でも、それで充分だった―」

という帯キャッチに魅かれて衝動買いした、有川浩の「植物図鑑」という恋愛小説ですが、思った以上に楽しんで読み終えました。「図書館戦争」シリーズで有名になった作家さんですが、女性視点のべたべたな恋愛小説と社会問題を織り交ぜる作風は定評があるようです。いろいろと読みながら感じたことと、最近ずっと思っていることを併せて書き綴ってみたいと思います。

ストーリーは、「ある日突然、美少女が自分の生活にやってくる」という、いわゆる「落ちもの」といわれる展開の逆パターンで、主人公の女性の生活に突然生き倒れのイケメンが登場するという、まぁどこかで聞いたことのあるような話です。

 
変わっているのは、その彼が「植物好き」で「料理上手」であるというところで、一宿一飯のお礼に彼が作った翌朝の朝ごはんが、都会育ちで外食ばかりしていた彼女の心を鷲掴む。そして、なだれ込むように「家政“夫”」として同棲生活が始まるという、現実ではありえそうもないけど、フィクションとしては書き古された感のある始まりです。

 
そこからしばしクリーンな関係を続けながら、二人は週末になると「散歩」と称して外で繰り出して、普段なら「雑草」と括られている様々な植物を、彼のうんちくを混ぜながら採取し、おいしく料理しては平らげていくのです。都会育ちの彼女も、彼に感化されて植物に興味を持ち、ずいぶんとたくましくなります。「雑草という名の草はない」というのが二人の口癖ですが、普段見慣れている植物も、都会暮らしではあまり見かけない草花も、その生態から料理法まで詳しく知ることができます。料理好きの僕ですが、山菜や道端の草を取って料理なんかしたことないのですが、草花を生活に取り入れている二人の描写がうらやましくなり、そこらの植物に視線を落とす回数も増えました。

そこから二人の恋愛の展開も、面白いのですがあまり触れないでおきます。読みながら感じたのは、「季節を味わって生きるっていいな」ということです。日本は世界の中でも四季の彩りが豊かな国だと思います。生活の中で春夏秋冬を感じて、さまざまな生活習慣や文化・慣習にも反映されていると思います。しかし、食に関して言えば、グローバリゼーションの影響か、はたまた輸送技術の発達によってか、季節とのつながりはどんどんと希薄になっている気がするのです。

今の若い人たちで、野菜の旬をちゃんと知っている人はどれくらいいるのでしょうか。僕もなんとなくは知っていてもちゃんと知っているわけではありません。それはスーパーやコンビニで、大概のものが季節を問わずに手に入ってしまう環境があるからだと思います。「いつでも、どこでも」というのは便利に聞こえるかもしれません。でもそこには深みが欠けている気がします。「旬」というのはいつ獲れるかだけではなく、「いつがおいしいのか」という概念です。そして「いつ一番栄養があるのか」ということでもあります。「いつでもどこでも」のせいで、「本当においしい時期」も「本当に栄養がある時期」も知らずに生きてしまっているのは、とてももったいない気がするのですね。


先々週の開発教育の授業で「地産地消」がテーマとなりました。地域で取れるものをその地域で消費しよう、という考えで、輸送費や運送によって排出される温室効果ガスが少ないことから、エコロジーでエコノミーであると最近広がっていますが、地産地消は万能薬ではなく、限界があります。土地によってはバラエティが少なく、都会に近づけば近づくほど、それだけで生きていくことは難しいのです。地産地消は一つの選択肢であって、だれもができることではないです。


それに比べると、季節を感じて、旬のものを食す、Seasonal dietとでも言える生き方には限界もなく、もっと多様に受け入れられる気がすると思っています。季節に合ったものを食べていれば、保存の量は減りますし、違う気候帯の地域から無理して輸送する必要も減ります。それでいて、一番おいしく、一番栄養価も高くご飯を食べられるのですから。

「いつでも、どこでも」ではなく、「今だから、ここだから」をもっと大事にして生きていくことは、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」の時代の明確なアンチテーゼとして成り立つのだとおもいます。

季節の移り変わりとともに、「あぁ、暖かくなってきたから、そろそろあの料理が食べたいな」とか「冬になる前に、あれを食べよう」と思いを巡らせ、一品一品に思い出を重ねなることができます。そんな風に豊かに生きたいなと思うのですね。

「植物図鑑」という本は何げなく手にとりましたが、まさしくめぐり合うべくして出会った本だなという感じですね。


P.S. 片思いは緑茶のように渋く、茶渋のようにしつこい、と感じる今日この頃です(笑)

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プロフィール
HN:
Junya Tanaka
性別:
男性
職業:
NGOスタッフ/参加型の場づくり研究・実践家
自己紹介:
青山学院大学の社会人大学院社会情報学研究科ヒューマンイノベーションコースで参加型の場づくり、ワークショップデザイン、ファシリテーションなどについて研究をしながら、震災関連の仕事をしています。

2007年5月南カルフォルニア・オレンジ郡にある4年制教養大学を卒業しました。その後にすぐにイギリスの大学院に行くつもりが、もろもろの事情でいかないことにし、日本に帰国しました。なぜかいまだに日本にいます。人生思ったようにはならないです(笑)
後悔はしていませんが、試行錯誤です。

2011年5月にまたまた転職しました。震災関連の仕事をするためにアメリカ系のNGOで働き始めました。

また休日や平日の夜にはイベントや会議や参加型のプロセスのデザインやコーディネートをやったり、さまざまな研修や会議のお手伝いをしてます。ご関心があればお声掛けください。こういう研修ってふつう結構高いので、学生が参加できる金額でやれたらなと思っています(参加費応相談)
◇参加型ファシリテーション入門編ワークショップ
◇傾聴力ワークショップ
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<現在企画中>
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